相続法大改正2018 詳細
相続法の重要な改正点
① 「配偶者短期居住権」を新設(居住に使用していた部分のみ)
・遺言がない場合
被相続人の配偶者が被相続人と一緒に住んでいた住居に
被相続人の死後、最低6ヵ月間無償で居住することができる。
遺産分割協議が長引いた場合は遺産分割協議の終了
(遺産分割協議書作成)まで無償で居住できる。
例:遺産分割協議の終了(遺産分割協議書作成)が
死後9ヵ月の場合は、9ヵ月間無償で居住できる。
・遺言がある場合
遺言によって住居の所有権者が配偶者以外になった場合
所有権を持った者より退去の申出を受けた時から6ヵ月間
無償で居住できる。
この権利は法律が当然に与える権利で一切の手続きが不要。
② 「配偶者居住権」を新設(①とはまったく異なる権利)
(この権利は居住していた建物全体に及ぶ)
・配偶者が死亡するまで無償で居住できる権利
・権利の設定手続きが必要
「権利設定方法」
1) 配偶者居住権を遺贈(遺言による贈与)する
2) 遺産分割協議にて配偶者居住権を設定する
配偶者居住権が設定された場合、
住居の所有権は、「配偶者居住権」と「負担付き所有権」に分かれる。
例:相続人が配偶者と子供1人の場合(法定相続割合は各2分の1)
相続財産が2.000万円のマンションと1.000万円の預貯金とする。
被相続人が遺言で配偶者にマンションの居住権を、そして子供に
所有権を相続させたとする。
配偶者 マンションの居住権 1.000万円
子供 マンションの負担付き所有権 1.000万円
配偶者 預貯金 500万円
子供 預貯金 500万円
配偶者、子供とも相続財産3.000万円の2分の1(1.500万円)を相続したことになる。
*配偶者居住権の財産価値は、配偶者の平均余命やマンションの築年数、耐久年数を考慮して決める。
*配偶者居住権は登記しないと第3者に対抗できない。
*配偶者居住権は一身専属の権利で譲渡などできないし、相続もされない。
③ 婚姻期間が20年以上継続している夫婦の相続財産の特別控除
法律上の婚姻関係が20年以上継続している夫婦の場合、
夫婦が一緒に居住していた土地、建物やマンションの所有権を
持っていた一方が死亡した時に下記に当てはまる時は、相続財
産から控除できる。結果、配偶者の相続する財産が増加する。
・土地、建物やマンションを生前贈与していた時
(特別受益の持ち戻しとはならないことを明文化した)
・土地、建物やマンションを遺贈(遺言で贈与)した時
(相続財産に含めないため現実的に配偶者の相続分が増加)
④ 自筆証書遺言の作成簡素化と国による遺言保管制度新設
・財産目録の作成はパソコンなどで作成することを認めた。
但し、財産目録の各ページに署名と押印が必要。(施行日参照)
・全国の法務局にて自筆遺言を保管する制度を新設。
*法務局への保管申請の際(本人申請のみ)に、家庭裁判所
の検認と同様の作業が行われるため家庭裁判所の検認が
不要となる。(相続人の負担軽減)
*自筆証書遺言を法務局に保管しない場合は家庭裁判所の検認は従来通り必要。
*相続人は全国どこの法務局でも、自筆証書遺言内容の交付を求めることができる。
*相続開始後、予め法務局に登録した相続人などの1人から
自筆証書遺言の開示を求められた場合、法務局は登録されて
いる相続人、遺言執行者、受遺者へ遺言保管通知を送付する。
*今後法務省令で定める様式で作成された無封の自筆証書遺言
が法務局保管の対象となる。
⑤ 相続人以外の親族(6親等内血族及び3親等内姻族)は
被相続人の療養介護に貢献(特別寄与)した時は特別寄与料を相続人に請求できる。
(無報酬、継続した年月、片手間でないが要件)
*特別寄与料の計算方法は未確定。
*相続人の間で特別寄与料がもめた時は家庭裁判所が決定する。
予想される家庭裁判所の計算方法
職業介護士の平均日当 X 介護日数 X 家庭裁判所の裁量割合
=特別寄与料
・介護の程度により職業介護士の日当の半日分か1日分か
などを考慮する必要ある。
・家庭裁判所の裁量割合は、全相続財産の金額・介護の程度を
考慮して裁量割合を決定する。
⑥ 相続する預貯金の仮払い制度新設
現時点では金融機関の預貯金は遺言がない場合は、遺産分割協議書の内容で金融機関は振り分けている。
改正後は、一定額(=預貯金額 X 3分の1 X 法定相続割合)は誰の関与もなく金融機関に引出し請求できる。
例:A銀行に900万円の預金があった場合、
900万円 X 3分の1 X 法定割合2分の1の場合 = 150万円
この場合150万円までならだれの関与もなく引き出せる。
但し、金融機関に相続人であること法定相続割合の証明が必要。
この制度は葬儀代金など被相続人の死後に必要な資金を持たな
い相続人の救済制度。尚、今後法務省令で最大引き出す上限額
が定められる。その上限額以上に被相続人の死亡に関する支払
が必要な場合は家庭裁判所の許可を得て引き出すことができる。
⑦ 遺言により不動産を法定相続分を超えて相続する場合も、
登記をしないと第3者に対抗できないことを明文化。
現行:遺産分割協議により不動産を法定相続分を超えて
相続する場合のみ登記をしないと第3者に対抗できない
⑧ 遺留分減殺請求は金銭による遺留分回復を原則とすることを
明文化。
遺留分減殺請求は「遺留分侵害額請求」へ名称が変更されました。
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